新橋人形の館 館主の日記

燃えサントラ&泣きロック酒場 BAR 新橋人形の館 館主の日記です。

これを美しいと思うのはまちがいなのか

これを美しいと思うのはまちがいなのか
        American Mary
    アメリカン・ドクターX (2012年カナダ) ソスカ姉妹監督


    双子の姉妹の注文は二人が片時も離れたくないから互いの左腕を交換すること、
    そして額の両側に悪魔の角のごとく尖った骨瘤を付けること。
    ブラッディ・マリーの受け負う手術は、目を大きく開いて型通り"アイドル顔"になり
    たい、巨乳になって男を虜にしたい、といった大多数派の美容整形ではない。
    乳首も性器も無い身体を注文する女性もいれば、ピアスやタトゥーのように二股舌
    (スプレッド・タン)を気軽に注文する若者もいる。

    双子の姉妹が注文した"額の角"の形成を見ながら、わたしは自分の額にあるホクロに
    ついて改めて考えた。
    隆起していて毛も生えてきちゃう厄介者なので、長年にわたりウジウジ悩んでいた
    のだが、ついに切除してしまおうと整形外科医に紹介状を書いてもらったばかりだ
    ったからである。
    この"たかがホクロ"は、愛想のない中年女をこれからますます悩ませていくものだ、   
    と考えていた。
    しかし、ブラッディ・マリーに注文される大胆でグロテスクな"改造"の数々は、
    自分の欲求、美の価値観に純粋に忠実で、わたしには非常に美しいものに思えた。

    額に角を作ってなりたい自分の造形に近づく、世間の価値観に合わせるためでは
    なく、それは自分のためにする"改造"。
    わたしの額のホクロはあっても得することはないが、人目を気にしてこれを排除し
    てしまうのは、わたしの「負け」になるような気がしてきた。


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                                                                                         監督のソスカ姉妹

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