新橋人形の館 館主の日記

燃えサントラ&泣きロック酒場 BAR 新橋人形の館 館主の日記です。

貴様の愛は、押入れの中の布団だ!      愛の学び舎「黒薔薇の館」

前回の“愛”の復習になるが、“愛”の表現はわかりやすい方がいい。
愛しかない4コマ漫画「味のプロレス」、田原俊彦の新曲「愛は愛で愛だ!」。
気取りのない“愛” と “L・O・V・E・ラブ” が、目視で皆んなにわかりやすく伝わる。

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今回、館主はある場所で、再び”愛“の表現を学んできた。
その場所とは、人目もはばからず、盲目的で粘着質な“愛”を表現する者たちが、美しくそして醜く夜毎に集うサロン、「黒薔薇の館」。

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         映画「黒薔薇の館」(1969年 深作欣二監督)

「黒薔薇の館」には、美輪明宏(丸山明宏)が関係してきた数々の男達が、新旧入り乱れて毎夜毎夜現れ、サロンに集まる大勢の客人の前で、臆面もなく妄執的に美輪に求愛する。

美しく女装をした(いえ、女性です)美輪明宏に、各々独創的な表現で鬼気迫る“愛”をぶち込んでいく男たちの面々。

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一人目の男  二人目の男  三人目の男   四人目の男   五人目の男   最期の男

 

一人目の男 西村晃 美輪の夫で大学教授。自分と美輪が溺れ呻きを上げた肉欲こそが真実の愛だと熱弁し、聴衆を前に陶酔する。
「諸君の愛は、押入れの中の布団だ!夜になるとゴソゴソと引っ張り出す、汚ならしい代物だ!」

         大学教授夫人時代の美輪明宏

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学問の合間に弓で叩き叩かれ責め責められ、鮮烈な“愛”を肉体で表現する


二人目の男 川津祐介 銀行の金を使い込んで美輪が歌うキャバレーに毎晩通い詰めた一途で気弱な若者。

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    横浜のキャバレーナポレオン時代の美輪明宏

 

三人目の男 内田良平 神戸の賭場で負けが込んでいたある日、入って来た羅紗緬の美輪に一目惚れした海の荒くれ者。

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       神戸の羅紗緬時代の美輪明宏


三人目の男と「黒薔薇の館」で刺し違える四人目の男 ジョー山中(城アキラ) 。

美輪が拾った黒人青年。死に際に無言で美輪に愛を伝える。

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五人目の男 小沢栄太郎  「黒薔薇の館」の主人で上流階級の実業家。

社会的にも家庭的にも円滑で安定した道を選ぶが、恵まれているはずの家族はそれに退屈しており、妻も息子(最期の男・田村正和)も駆け落ちして家出したが、いずれも挫折し夫そして父である彼の庇護を受けに家へ戻った。

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「あなたのいない館は、まるでミイラの陳列場です」
もし、男からこんな恐怖のビジュアル付き比喩で愛の告白をされたら、館主(私:新橋人形の館 館主)は夜毎に魘され、一生忘れまい。

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「黒薔薇の館」に囲った女(美輪)の最期の男は息子(田村)であったが、彼は迷わず女を切り捨て、息子を選ぶ。

この映画、というよりこの芝居、この舞台を観ていて、私はビリー・ワイルダーの映画「サンセット大通り」を想い起こした。
“彼女”、美輪明宏があの役を演じたら、どうなるだろうかと。

荒れ果てた大きな古い屋敷。其処で罠にはまる男を待ち続けるのは、世間からとうの昔に忘れ去られ、過去の栄光の夢の世界=荒れ果てた屋敷の中 だけに生きる老女優。

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   映画「サンセット大通り」で熱演するグロリア・スワンソン


美輪明宏の代表作「老女優は去りゆく」(作詞/作曲: 美輪明宏)には、往年の大女優の悲哀を歌った一節がある。

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      スポットライト浴びた歓び 楽屋には花々

        拍手の嵐 取巻きの人々 甘い生活
    でも 若くして成功した誰しもが そうであるように

        私もまたつい いい気になっていた 

       ふと気が付くと まるで潮が引くように

      私の身の回りから人々が遠ざかっていた
      世間では私のことを再起不能と嘲笑っていた 
      落ちぶれた過去のスター 落ち目の流れ星
         もう一度 舞台に立ちたい

      あのスポットライトの下で拍手を浴びたい

 

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