この3枚の座布団を、あれこれ、いそいそ、じんぐりに置き換え、定位置を決めて改めて感じた。また一つ、大人の階段を下りてしまったと。(52歳・㊛)
当館は新橋にあるが、館主の家は徒歩や自転車で帰れる距離にはない。ほぼ毎日、このボロソファーでゆっくり休憩してから、早朝に電車で帰宅する。
つまり、誰よりもこの3枚の座布団を必要としていたのは、館主本人だったのである。
ソファーに寝ると、ちょうど尻の重みで腰が折れる形でソファーが沈むので、その辺りにSLAYERを置き、枕の代わりにRANCIDを置く。
EXODUSは、汚すのがもったいないので、尻の下にも顔の下にも敷かないで、ただ眺める。
EXODUS「Bonded by Blood」
1980年に結成されたエクソダス(EXODUS)は、カリフォルニア州 サンフランシスコ・ベイエリア産のスラッシュメタル、「ベイエリア・スラッシュ」を代表するバンド。「メタリカ」のカーク・ハメットが在籍していたことでも知られている。
エクソダスの独特なリフのカッティングはベイエリア・クランチと呼ばれ、スラッシュメタルバンドはもとより、デスメタルバンドにも大きな影響を与えた。
同じくサンフランシスコ・ベイエリア出身の「テスタメント」「フォビドゥン」といったスラッシュメタルバンドはいずれもベイエリア・クランチを特徴としており、ともにベイエリア・スラッシュと呼ばれている。
ランシド(RANCID)もまた、1991年にサンフランシスコ・ベイエリア内、イースト・ベイで結成されたパンクロック・バンド。
RANCID「…And Out Come The Wolves」
1995年、それまでレコーディングに1週間以上費やしたことがなかった彼らが、1ヶ月以上をかけて制作した3rdアルバム「…アンド・アウト・カム・ウルヴズ」をリリース。シングルカット「タイム・ボム Time Bomb」が大ヒット、各国でゴールドディスクを獲得した。
さて、人は誰でも立ち仕事で疲れると、むくんだ足を少し高くして寝たくなるものだ。ソファーの上で頭・腰・足、3枚の座布団に上から下まで全身を乗せて、愛用の"人型寝袋に包まれてぬくぬくできたら、どんなに寝心地が良いことだろう。
人型寝袋は人型なので、そのまま歩ける。
EXODUSは畏れ多くて身体の下には敷けないので、惜しげなくこの尻で敷き潰すことができる座布団が、もう1枚、どうしても必要である。
夜中の館内で一人、人型寝袋を着用し、この高慢な尻に敷かれるに相応しい座布団を選びを始める。やはり、メタルかパンクかホラー映画のキャラクターか、と選択肢を絞っていく。
すると、あるバンド名らしきものに目が留まった。「BEHEMOTH」。
BEHEMOTH 「THE SATANIST」
これ、確かブラックメタルのバンド名だったよな。しかし、果たして世界で何人が買うことを想定して作ったのだろう、この"ビヘーモス"の座布団。
兎にも角にも"ビヘーモス"が、私の記憶どおりにブラックメタルのバンドかどうか、先ずは確認せねばならない。
BEHEMOTH(ベヒーモス)は、ポーランド出身のブラックメタルバンド。
同じくポーランド出身の「ヴェイダー」「ヘイト」らと並び、エクストリーム・メタルシーンの確立に貢献した。音楽性は当初のブラックメタルから、近年はデスメタルのスタイルに接近している。
やった!よかった!やっぱりブラックメタルのバンド名だった!と、ホッと胸を撫で下ろす。
ガッツポーズもした。
そして知った。「BEHEMOTH」はビヘーモスではなく、ベヒーモスなのだと。
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